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東京高等裁判所 平成元年(ネ)3618号 判決 1993年2月24日

控訴人

右代表者法務大臣

後藤田正晴

右指定代理人

芝田俊文

外五名

被控訴人

西島豊志

右訴訟代理人弁護士

泥谷伸彦

右訴訟復代理人弁護士

島袋栄一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

本件控訴を棄却する。

第二  当事者双方の事実の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示第二中控訴人関係部分記載のとおりであり、証拠の関係は、本件記録中の証拠目録(原審・当審)記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。

1  原判決書四枚目表一〇行目末尾の「こ」を削り、同裏一行目の次に行を改めて次のとおり加える。

「 なお、防空壕は、人工的に土地の内部に空間を作出し、この内部空間を建物の内部のように利用するものであり、その目的上内部空間を保持するための構造を有しており、このように人工的に作出された内部空間は恒久的に存続し、この内部空間の利用は経済的に評価することが可能でそれ自体独自の価値を有するものである。したがって、防空壕は、半永久的に存続する一個の施設であり、建物に準ずる実体を有するものとして、土地と独立した不動産として所有、占有の対象になるものである。仮に独立した不動産ではないとしても、本件防空壕は、土地に対し掘削という人工的作業を加えることにより成立したものであるから、民法七一七条一項の「土地ノ工作物」に当たるものであり、これは、支柱、板等の有無に関わりのないことであり、本件防空壕が素掘りのものであっても土地の工作物に当たる。」

2  原判決書八枚目表二行目から末行までを次のとおり改める。

「2 同2の事実は不知、または争う。

本件防空壕は、丘陵に掘削されたいわゆる横穴式のもので、支柱、側壁はおろかその痕跡もない単純な素掘りの壕にすぎない。本件土地がただ単に掘られただけのものであるから、物理的に本件土地から独立して存在するものということはできず、土地と一体をなすものであるし、社会、経済的に本件土地から独立して取引の対象となるものともいえず、その存在自体から本件土地の価値を左右するものでもない。したがって、本件防空壕は、土地の構成部分であって、独立した不動産ではなく、物権の客体となりえないものであり、土地の工作物にも当たらない。仮に土地の定着物であるとしても、建物ではないから、物権の客体となりえない。

仮に本件防空壕が独立の工作物として所有、占有の対象になるにしても、抗弁で述べるように、西島良太の死亡は不可抗力によるもの、あるいは同人の一方的過失によるものであって、本件防空壕の設置、保存に瑕疵はなかった。」

3  原判決書九枚目裏六行目の次に行を改めて「2 控訴人は、次のとおり本件防空壕の所有権、占有権を失ったものである。」を、同七行目の冒頭に「本件防空壕についての土地使用権原は、国家総動員法(昭和一三年法律第五五号)一三条三項が「政府ハ戦後ニ際シ国家総動員上必要アルトキハ勅令ノ定ムル所ニ依リ総動員業務ニ必要ナル土地若ハ家屋其ノ他ノ工作物ヲ管理、使用若ハ収用シ又ハ総動員業務ヲ行フ者ヲシテ之ヲ使用若ハ収用セシムルコトヲ得」と規定し、これを受けて土地工作物管理使用収用令(昭和一四年勅令第九〇二号)一一条一項が「土地又ハ工作物ヲ管理又ハ使用スル場合ニ於テハ管理又ハ使用ノ時期ニ於テ政府其ノ権利ヲ取得シ其ノ他ノ権利ハ管理又ハ使用ノ期間其ノ行使ヲ停止セラル但シ管理又ハ使用ヲ妨ゲザルモノハ此ノ限ニ在ラズ」と規定している「管理、使用権」であり、控訴人は、本件土地を管理、使用する権原を取得して掘削し、掘削した部分(本件防空壕)を本件土地の一部(すなわち、構成部分)として管理使用していたものと推定されるところ、」を、同一〇行目の「原則として」の次に「右地下壕の管理使用権を」をそれぞれ加え、同一〇枚目裏一行目から一〇行目までを次のとおり改める。

「 本件防空壕は、工作物として取り扱う程度に至らないものであるし、所管財務局に引き継がれた事実もないので、これらの通牒に従って本件土地についての国家総動員法一三条三項所定の「管理、使用権」が本件土地の所有者に無償譲渡されたものというべきであり、権原取得の原因からして、右各通牒により当然に、あるいは少なくとも控訴人の一方的意思表示によってその効力が生じたものと解すべきであるから(「管理、使用権」の返還あるいは放棄と同趣旨と解される。)、本件防空壕を含む控訴人の本件土地の管理、使用権は消滅した。さらに、控訴人は、本件土地を管理、使用する権原を定めた国家総動員法及び戦時緊急措置法を廃止する法律(昭和二〇年法律第四四号)を公布し、控訴人による本件土地の管理、使用権を消滅させる意思を明確に宣明したことにより、本件土地を管理、使用することにより自己に利益を帰属させる意思、すなわち自己のために占有する意思を持たないことを積極的に表示したので、右法律施行の日である昭和二一年四月一日から六箇月を経過した日において、本件防空壕をその構成要素とする本件土地に対する占有意思を放棄し、これにより控訴人の占有権は消滅した(民法二〇三条本文)。その上、本件土地の管理、使用権は終戦と同時、または遅くても右昭和二一年四月一日から六箇月を経過した日に消滅し、それ以降控訴人は事実上の支配も及ぼしていないのであるから、本件事故時には控訴人は本件防空壕を構成要素とする本件土地に対する所持を失い、これにより控訴人の占有権は消滅していた(民法二〇三条本文)。

以上のとおり、本件防空壕は、本件土地の一部であるから本件土地所有者である原審相被告江波戸豊子(以下「江波戸」という。)が占有しているものであるし、仮に本件防空壕が「土地ノ工作物」に当たるとしても、本件土地所有者である江波戸が所有、占有しているものというべきであるから、仮に本件事故につき民法七一七条の責任が問われるべきものとすれば、それは江波戸であって、控訴人ではない。」

4  原判決書一〇枚目裏末行の「2」を「3」に、同行の「いつ土砂が」から同一一枚目表六行目までを「、終戦後本件事故に至るまで三六年もの年月を経たことから危険な状態が生じたもので、しかも、終戦直後に内務省等の所管で実施された埋戻し事業や昭和四八年から行われた埋戻し事業に係わる実態調査の際にも発見されず、もとより付近住民からの通報や陳情もなく、その存在自体控訴人に判明せず、したがって、控訴人としては、本件防空壕の危険性及びそれによる損害の発生を全く予想しえず、その結果、危険防止措置を講ずることが不可能であった。また、本件土地所有者である江波戸は、原審において軍が戦争中同人の所有地内に防空壕を建設したことを認める旨の準備書面を提出したこと及び本件土地からせいぜい数百メートルほど離れたところに住んでいることからすると、本件防空壕の存在をその掘削当初から認識していたことが窺われ、本件のごとき崩落事故発生についてもある程度予見可能であったにもかかわらず、終戦後本件防空壕が危険な状態であれば危険防止措置としてその埋め戻しを控訴人に対して求める等のいわゆる原状回復請求権を行使すべきなのに戦時補償特別措置法の施行(昭和二一年一〇月一九日)により右権利が消滅するまでの間これを適切に行使しなかったことを始めとして、所有者としての適切な管理を全く行わなかった。その上、本件防空壕はもともと民有の雑木が生い繁る小山を利用して造成したもので、入口付近は生育する篠竹等のため公道からも見ることができない状況にあり、一般人、特に年少者が接近するような場所ではなかった。そして、西島良太は、学校でも本件防空壕に近づかないように注意され、本件防空壕が立ち入ってはならない危険な場所であることを十分認識していながら、周囲の注意を無視してその内部に立ち入り、しかも、本件防空壕は素掘りで天井や壁面が板等で補強されていないのに、化石を採るため天井を棒で突いて天井部分を崩落させ本件事故に至ったものである。これらの事実からすると、本件事故は、不可抗力によるものというべきであり、あるいは、およそ事理弁識能力ある者として極めて異常な行動に出た西島良太の一方的過失によるものであるから、損害の公平妥当な分担を図るという不法行為制度の趣旨からして、本件損害の一部でも控訴人に負担させることは、衡平の原則に反し、許されないものというべきである。

なお、本件防空壕は、単純な素掘りの横穴式のものであるが、終戦当時は安全性を有していたのであるから、第二次大戦に際しては、戦争犠牲または戦争損害については、国民のすべてが多かれ少なかれその生命、身体、財産の犠牲を耐え忍ぶべく余儀なくされ、国民が等しく受忍しなければならなかったものであり、これらに対し補償をすることは憲法の予測しないところであったことからして、たとい自己の所有地に国により防空壕を掘削され、その後原状回復措置が講じられない状態で返還されたとしても、それは、一種の戦争損害として土地所有者が受忍せざるをえないものというべきであること、及び防空壕はその特性を生かして他の色々な用途にも利用可能であるので、埋戻し等をしないことが土地所有者の意向に反するとは必ずしもいえないことを考えると、右の控訴人の措置が当時としては不適切な措置であったということはできない。」

5  原判決書一一枚目表八行目の「抗弁記載1」の次に「、2」を、同行末尾に「主張は争う。」を加え、同行の次に行を改めて次のとおり加える。

「 仮に控訴人主張のとおり本件土地の管理、使用権が消滅したとしても、

それは本件土地の利用正権原が消滅したということにすぎず、控訴人の本件防空壕に対する所有権、占有権まで消滅するものではない。また、仮に控訴人が本件防空壕の現実の管理をしなくなったとしても、控訴人が以前本件防空壕を占有し、土地所有者に占有が戻っていない以上、占有者としての責任を負うべきである。」

6  原判決書一一枚目表九行目の「2の事実のうち、」を「3の事実のうち、本件事故が不可抗力によるものであるとの点及び」に改める。

理由

一当裁判所も、被控訴人の本訴請求のうち、控訴人に対し損害賠償金として金八四〇万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める部分は理由があり、認容すべきであると判断する(右金額を超える部分については、被控訴人の不服申立てがないので、判断しない。)。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の理由説示(控訴人関係部分)のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決書一一枚目裏末行の「地面」を「天井や上部の土」に改める。

2  原判決書一二枚目表七行目の「空間を設け、」の次に「必要に応じて」を加え、同一〇行目の「公知の事実であり、このような」を「公知の事実である。そして、防空壕が、このように土地に掘削という人工的作業を加えて成立したものであること、防空壕内部の空間は周囲の土地自体とは明確に区別され、これとは別個独立に支配し管理することができるものであること、及び防空壕の内部空間は、地上の建物と同様、いわば地中の建物として、その中で居住し、あるいは物を貯蔵する等して周囲の土地と別個に利用することができるものであって、土地とは別個の社会的、経済的価値を有するものと認められる(少なくとも、本件防空壕は、後に認定するその規模からしても、独自の実体、価値があったと認めるべきである。)ことからすると、」に改め、同末行の「空間は、」の次に「少なくとも出入口を有し周囲の土地とは別個のものとしての防空壕の体裁を保っている限りは、」を加え、同裏三行目を「ある。このことは、本件防空壕のように、天井、壁等に板や支柱の用いられていない、いわゆる素掘りの防空壕(原審証人磯部敏之の証言による。ただし、<書証番号略>〔昭和五六年一〇月二一日付毎日新聞〕によれば、本件防空壕にも以前は松等の支柱があった可能性はある。)の場合も同様に解すべきである。<書証番号略>によれば、東京都の横穴式防空壕の大部分は土質が関東ローム層で粘着力が強く、支保工なしで掘れたので素掘りであったことが認められるように、支柱、板等により補強をするか素掘りのままにしておくかは土質等による補強の必要性の有無により決まるのであって、内部の空間を建物と同様に周囲の土地と別個独立に利用する防空壕としての本質とか社会的、経済的価値には全く変わりがないからである。」に改め、同四行目から八行目までを次のとおり改める。

「 <書証番号略>によれば、本件防空壕は、本件事故日に西島良太の救出にあたった消防隊員が確認しただけでも、かなり崩壊している部分もあるものの、入口から事故現場まで七〇メートル余あり、その間所々で枝分かれしており、幅も最大五メートルほどあったこと、原本の存在と成立に争いがない<書証番号略>によれば、八日市場には旧海軍香取航空基地の施設として素掘りの防空壕が築造されたこと、前掲<書証番号略>によれば、本件防空壕は旧海軍の掘削したものであると言われ、そのように信じられてきたことがそれぞれ認められ、これらの事実によれば、本件防空壕は、旧海軍が掘削し、その用に供していたものであることが明らかである(旧軍以外にこのような壕を掘削するとは考えられない。)。」

3  原判決書一三枚目裏二行目の冒頭に「<書証番号略>」を、同五行目の末尾に「、地下壕(防空壕)の「管理、使用」につき、」をそれぞれ加え、同一四枚目表一〇行目の「右無償譲渡」から同裏五行目までを次のとおり改める。

「ところで、海軍(国)が本件防空壕を掘削するため本件土地を使用し得た権原については、本件土地所有者との間で何らかの契約を締結したとの証拠もないので、掘削人が主張するように国家総動員法一三条三項、土地工作物管理使用収用令の定める管理、使用権によるものであった蓋然性が高いものということができるので、以下これを前提として考えることとすると(もっとも、以下に述べることは、権原喪失の事由を除けば、契約に基づく使用権原によった場合でも同様にあてはまる。)、同法は、国家総動員法及び戦時緊急措置法を廃止する法律(昭和二〇年法律第四四号)により右法律施行の日である昭和二一年四月一日(昭和二一年勅令第一八一号)から六箇月を経過した日において廃止され、控訴人は右管理、使用権を失ったものということができる。そして、控訴人である国が右法律を公布して本件土地の管理、使用権を消滅させる意思を明確にしたことからすると、右昭和二一年四月一日から六箇月を経過した日以降は、控訴人は本件防空壕を管理、使用する意思を放棄したものというべく、現に弁論の全趣旨によれば、控訴人はその後本件防空壕につき現実の支配管理を止めてしまったことは認めてよい。しかしながら、控訴人の有した管理、使用権は、本件土地所有者との関係で、本件土地に本件防空壕を掘削し、これを存置して利用を続けるために必要な権原であるから、この権原が消滅したからといって、控訴人が本件防空壕の所有権を失うものでないことはもちろん、前記の各通牒があるからといって、譲渡行為もなく、譲受人となる土地所有者の承諾もないのに、当然に本件防空壕の所有権が本件土地所有者に移転するはずはない(土地所有者に利益な場合でさえそうである。一般的には迷惑なことであるから、なおさらである。)から、依然として本件防空壕の所有権者は控訴人であったといわなければならないし、右のように控訴人が一方的に管理、使用を放棄したからといって、当然に本件土地所有者が本件防空壕を占有するに至ることになるはずもない。控訴人は、本件防空壕の所有者として(後述の占有者としての責任を度外視すれば)民法七一七条一項に基づく責任を免れないというべきである。本件防空壕が取引法の観点からは独立の物(不動産)と認めるには問題があることは控訴人が指摘するとおりであり、当裁判所もこのことは否定しない。しかし、前記二冒頭の認定・判断からすると、本件防空壕は土地とは別に独立して支配管理の対象となっていたと認められるから、不法行為法の観点からみて民法七一七条一項にいう「土地ノ工作物」に当たると解されることは明らかである。そして、損害の公平な分担という見地から土地に工作物を設置することに一定の利益を有する者にその工作物により生じた損害を負担させるという同条の立法趣旨は本件にもそのまま妥当する。したがって、不法行為責任を論ずる限りでは、本件防空壕も所有権の対象となり得るものとして控訴人の所有者責任を認めてよい。また、本件においては、控訴人は占有者としての責任も免れない場合に当たるので、この点も付け加えておく。すなわち、工作物の占有者の責任は、これを現に管理し、支配する者の管理義務の側面に着目して認められるものであるから、当該工作物がなくなるか又は占有が他に移転する等して(つまり、他に支配管理する者、したがって責任を負い得る者が生じて)はじめて消滅すると解される。工作物をそのままにしてその管理、使用を放棄したという事実は、むしろ危険な物を放置したことに他ならないから、その責任を問う事由にこそなれ、責任を免れる理由とはならないと考えられるからである。

控訴人は、本件土地所有者が終戦後危険防止措置として埋戻しを控訴人に対して求める等のいわゆる原状回復請求権を行使すべきであったのに、戦時補償特別措置法の施行(昭和二一年一〇月一九日)により右権利が消滅するまでの間これを適切に行使しなかったと非難するが、本件土地所有者が当時本件防空壕の存在あるいはこれが危険なまま放置されていたことを認識していたことを認めるに足りる証拠はない(原審において相被告江波戸が本件防空壕は海軍が掘削したものであることを認めるからといって、必ずしも訴訟前から本件防空壕の存在を知っていたと認めることはできないし、弁論の全趣旨により成立が認められる<書証番号略>によれば、江波戸は控訴人主張のように本件土地から比較的近距離に住んでいることが認められるが、原審における検証の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件土地は何らの利用もされずに放置されていた雑木、雑草の茂った小山であり、本件防空壕の入口も篠竹等のため公道から見えなかったことが認められるので、右事実から江波戸の認識を推認することもできない。)。ごく常識的に考えても、本件土地所有者には何の落度もないばかりか、むしろ国に協力したのに、元通りにして返すという当たり前の義務すら果たさないでおいて、後になって国のした工事の結果責任を負えというのは、あまりといえばひどい言い分である。控訴人の主張は到底採用できない。さらに、控訴人は、戦争損害云々と主張するが、本件事故は、控訴人である国が造った本件防空壕を危険な状態のまま放置していたために昭和五六年に起こった不法行為にほかならない。戦争による損害などといえるものではない。」

4  原判決書一四枚目裏一〇行目の「放置してきたこと」の次に「、そのため本件防空壕の中は崩れやすくなり、現に本件事故当時すでに所々崩れ落ちている部分もあったことが<書証番号略>及び」を加え、同一五枚目表六行目の「所有及び占有」を「所有(及び占有)」に改め、同裏四行目の「ものの、」の次に「本件防空壕はもともと人が入って利用するものであり、立入り自体についていえば、これが工作物としての本来の用途に反するというようなものでなく、本件事故は正に本件防空壕が本来具有すべき安全性に欠けていたため起きたものであることを考慮すると、」を、同五行目の「死亡が」の次に「同人の極めて異常な行動に起因するもので」をそれぞれ加え、同六行目冒頭の「と」を「とか、不可抗力によるものであると」に改める。

5  原判決書一七枚目裏一〇行目の「に伴う危険のある」を「及び棒で天井や上部の土を掘ることが危険を伴うことである」に、同末行冒頭の「で、」を「であり、その上、<書証番号略>によれば、学校でも防空壕に入らないように注意されたことがあることが認められるので、」にそれぞれ改める。

6  原判決書一八枚目末行の「ありうる」を「ある」に改める。

二以上によれば、被控訴人の本訴請求のうち、控訴人に対し民法七一七条一項に基づき、損害賠償金八四〇万円とこれに対する本件事故発生の日の後である昭和五六年一〇月二一日から完済に至るまで年五分の割合による金員の支払いを求める部分は理由があるから、これを認容した原判決は相当であり(右金額を超える部分については判断しない。)、本件控訴は理由がない。よって、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官上谷清 裁判官満田明彦 裁判官亀川清長)

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